武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

橋本一子&橋本眞由己ライヴ(平21)

(平成21年10月16日のライヴの感想)

ジャズバーにて、橋本一子さん、橋本眞由己さんのライヴ。 一部が一子さんのソロピアノ&唄、二部が眞由己さんの唄と一子さんとのデュオ。

テーブル席が並ぶ中、グランドピアノの背後をカッコで括る風なカウンターがあり、そこに独り座る。やがて現れた一子さん。斜め後ろから見るお姿はとてもか細い。

しかし、細い指が、鍵盤の一本一本を染めてゆく。果てにはピアノを、店本体を。

彼女のライヴは初めてだったが、驚いたのは録音物と感触が変らないこと。迫力ないという意味でなく。
レコーディングで可能なことと、不可能なこと、ライヴだから出来る事、やれない事というのが環境上あるし、まして私の聴いた録音物はシンセの打ち込みとかも多いから、ギャップがあって不思議でないのだが、一子さんには、ほとんど感じない。

音楽を弾く、唄うというよりも、染色をしている、と思う。楽器や楽曲や媒体や場所の境界なく、彼女の色がある。質の落ちない染物を広げてくれる。
それは勿論簡単ではないだろう。鍛錬はもとより、境界線のない音楽を世に通す為に、境界線を守る人達からの拒絶や非難も受け止めなくてはならなかったろう。それらを越え。
こちら斜め後ろで、身が引き締まる思いと、解きほぐされる思いがした。

眞由己さん、これまたか細い方だが、どこの洞窟から出てるのかと思う声の深い響き、それでいて損なわれない繊細な模様。やはり染物か。
特に和風の楽曲(昔の子守唄『ねんねこしゃっしゃりませ』と、一子さん作の“KITUNE”)での研ぎ澄まされ方が凄かった。


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