武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

音楽を聴く<14>

山口美央子"NIRVANA"(昭56)
主にアイドルに書いた作曲家としての側面に近い明朗さが光る。でもやはり井上鑑との共同アレンジは、ちょい隣の中国から果ては涅槃まで、自在に飛びゆく(私的にはエッジーな"Nirvana"や『秋波』がやっぱり好き)。声がコケティッシュでいて透明で、楽曲との相性は運命的。

岡本舞子『ハートの扉』(昭60)
全作編曲山川恵津子! 煌びやかで、陽の印象なのに泣ける。
歌手は当時14歳! 難易度高いメロもこなし、レトロがかった阿久悠の詞も成立させる安定感。
そう、基本は阿久とエッジーな山川とのアンバランス感、岩崎宏美でもない渡辺満里奈でもない世界観を楽しむアルバム。

伊東ゆかり"MISTY HOUR"(昭57)
林哲司プロデュース。単に「シティポップやってみた」でなく、ゆかりさんの慎ましやかなボーカルに沿い、どこかオールディーズ的な温りも感じさせる。
一番若手のEPO作曲『告白』は尖っていつつアダルトで好き。ムッシュの直球ジャズ『ナイト・ミラージュ』もゾクゾク。

●ジョン・グレゴリー"A MAN FOR ALL SEASONS"(昭49)
神聖さを薫らす世界観と、市井または都会のムードとを、インストながら割と短いスパンで行ったり来たり。当り前だけど市井になると70年代の空気と色が溢れだし。特に"Jaguar"の生物みたいにうねるストリングスと、気怠く燻るようなリズムは堪らない。

松原みき"LADY BOUNCE"(昭60)
向谷実らによる、歌手向けでないメロとコードの鎖に蹂躙されちゃう……と見せかけ、実は如何なる縛りも彼女には衣裳であり。どんな男もシチュエーションも逆に押し倒し、悦楽を骨まで貪る。我々は只受身で翻弄される。
言葉選びも一切の無駄のないオートクチュール。見事!


©️2021TSURUOMUKAWA