武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

私的すたんだーどなんばー<漆>『魅惑のムード☆秘宝館』

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<昭和40年代を中心にセレクトされたお色気歌謡曲のコンピ。著名な辺見マリ『経験』奥村チヨ『恋泥棒』なんかも入っているが、それ以外はほぼ知られざるラグジュアリーな、或いはインモラル、裏街道的な世界観がフェロモンたっぷりに展開される>

私の邦楽の趣味は80年代からスタートして、そこからいきなりSP盤(50年代以前)に飛び……そのはざまである60~70年代あたりに親しむのはかなり遅かった。聴いてはいたが格段に好きな歌手も見出だしておらず、何が魅力かも掴めずいた。

そこに友人が聴かせてくれたのがこのオムニバス。

あぁそうか、「色気」なんだ、と、あっさり腑におちた。

専業作詞家による、俗っぽさと文学性をおびた言葉。恋に生きるの死ぬのと喘ぐ歌声および楽器……シリアスなようでどこか冗談めいて、Mっぽく見えて猛々しさがあり、下卑ているようで潔く美しい……
ある種往年の芸妓のような婀娜っぽさが、この時代のエッセンスなんだと、マニア向けである筈の盤から、私個人は得心した。

この盤には叩きあげた正統派シンガーから、女優、グラビアモデル、ニューハーフまで登場するが、「ある種芸妓」であるからして、みんな媚態を見せていながらも、寧ろそれは威嚇にも近いニュアンスで、生半可な男などおいそれと寄せず、たぶん同性をも圧倒し、結構カッコいい?とまで思わせるオーラを纏っている。

音楽とビジュアルにあまり乖離がないのも、この時代ならでは。エロ路線だとよりコンセプチュアルになって、尚且つコスプレとかに流れずファッションとして成立しているのも興味深い。
ただこの盤のジャケットは何故か現代(たぶん)のイラストレーション(インナーには各楽曲のジャケ写あり)。ちょっとイメージと違うので、あい杏里『恋が喰べたいわ』の肉食獣ジャケ写を載せておく。


©️2020TSURUOMUKAWA