武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

私的すたんだーどなんばー<陸>淡谷のり子『私の好きな歌』(昭26~34)

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SP盤の魅力に取り憑かれるきっかけをくれたのはこの御方。

鈴木清順監督による映画『夢二』のエンディングで流れていた『宵待草』が出会い(あの音源は未だ手に入れてないのだけど、いつ頃歌ったものだったのかな?)。
以後、NHKの『ラジオ深夜便』等で流れていた本人特集や服部良一特集だとかを追いかけ、MD(!)に録音する日々が始まった。思えばあれは本人が亡くなってまだ間も無い頃だった。

日本最初のシャンソン歌手で、声楽の素養を活かした歌唱法は華がありつつも、表現過多にならず寧ろ抑制が絶妙にきいており、和的なワビサビ、水墨画のような美さえ感じさせる。反して衣裳はゴージャスだったけれど、「歌手にとって戦闘服」という美学に基づくがゆえだろうか猥雑とはならず、不思議なバランスが取れていたと思う。
最初でありながら、今後も決して現れないタイプなのだろう。

戦前からCDの時代に到るまで60年以上、レコード会社を放浪しつつ活躍しつづけたわけだが、幸運なことに殆どの会社での歌唱がデジタル化されており、現在では中古もふくめれば大概入手できる。

そんな中で取りあげたいのが、50年代に所属したビクターの音源3枚組。
1枚目が和製のオリジナル曲で、2~3枚目がシャンソン・ラテン・ポピュラー等の舶来物。
「和製」をあまり好んでいなかったらしい本人としては、想像だけど、シャンソンの隆盛もあり続々リリース出来喜ばしい時代だったのではないか。年齢的にも声に張りとえもいわれぬ淑やかさがあり、ビクターオーケストラの音色も美しい。アコーディオンアンドレ・レジャンら少数精鋭による粋なプレイもあり。

ブックレットの解説も丁寧で、写真も豊富。
2枚目の写真は、浅草のマルベル堂へ行った時に買ったプロマイド。


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