武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

私的すたんだーどなんばー<肆>斉藤由貴『風夢』(昭62)

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<デビュー3年目4枚目のアルバム。
ドラマ映画、CMにも引っ張りだこだったこの時期、曲も数多く流れていたものだ。『砂の城』はカセットテープAXIA、"ONE"はカルピス(ウォーターではない)、『街角のスナップ』はNECパソコン(むろんインターネット以前。何に使っていたのか)……
"MAY"は主演映画『恋する女たち』主題歌だった>

思えば作詞作曲編曲等のクリエイターを、アイドルや役者シンガーを通じて実に数多く教わった。かの谷山浩子武部聡志崎谷健次郎との出会いもここで。

とは言え、斉藤由貴プロジェクトはその類に於いてだいぶ異質だったと思う。プロデューサー長岡和弘らの話によれば……「始めから男性客をターゲットに据えていなかった」「基本、チーム的にメンバーを固定しアルバム作りをした」「斉藤当人にも早くから詞を書かせた」「会社に内緒で企画を通したことも多々」……
長岡はディレクションも独特で、斉藤にもミュージシャンに対しても、さながら役者への演技指示のようだったという。

そして斉藤はその目論見以上に応える女優でありアーティストであった。楽曲が牧歌風からエレガンス、荘厳さを湛えたものまで実にバリエーション豊かだった中、自作詞はどんな設定でも他と何ら違和感なく肩を並べていたし、女優としての情感とテクニックで総てを歌いわけることもした。ある意味映画以上に映画的……

それにしても、前述の矢野顕子とほぼ同じ時期に、あったのが不思議だ。大海を隔てたふたつの国を交互に旅していたような贅沢。
両者お国柄は違えど(まさか被ってるメンバーは一人もいないよね?)、あれほどのメジャーシーンにいながら所謂「流行歌」の匂いがしないところは共通している。

当時はカセットで購入。CDとは曲順が異なり未収録の曲もあったけれど、今でもこっちの並びが好き(再発盤はすべてアナログの曲順で収められているそう)。
アルバムジャケ写もコレが一番かな。撮影は斉藤清貴


©️2020TSURUOMUKAWA