武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

音楽を聴く<11>

浜田真理子"Live. La solitude"(平26)
資生堂や揖保の糸等CM曲の風合い優しいイメージ……と思ってかかると豪い目に遭う。彼女の紡ぐ優しさは闇の隙間から刺す夏の光線、或いは涌く水の凍える冷たさ。一見聴衆をシカトしたかと勘繰る選曲も聴けば一片のムダもない彼女の葉脈。

薬師丸ひろ子"PRIMAVERA"(平3)
地に足つけポジティブな曲が多いのは時代ゆえか。私的には坂本龍一矢野顕子、そして意外やKANによるファンタジックな楽曲が好きだけれど、舞台が天上でも部屋の片隅であろうと慈しみ包むように唄いこなす、女優の感性とはまた別の力量に驚くばかり。

●風見りつ子『アヴァンチュリエ』(昭61)
3枚出したアルバム各々カラーが異なるが。この盤の香は「神話」だ。和製ヨーロピアンな歌姫プロダクツは数多あるけれど、神話の高貴さの裏に映る俗的な淫靡さ、破られる為の禁忌を、臆さず恐らく自覚もして晒し、且つ美しく身に添わせている人物はそういない。

●風見律子『ヌヴェル』(昭62)
神話めいた前作に較べると土着的なムード。声色も変え南寄りのコケティッシュな娘像といった感じ。引き続き登板の山川恵津子はじめかしぶち哲郎、奥慶一、山本俊彦らにより、透明感ある音を基調としつつ陽に灼かれ土にまみれ海の泡となりゆく様をカラフルに描写する。

松本伊代『風のように』(昭62)
冬リリースを意識していたか? 音色や歌に雪の粒、灯りの粒のような感触が終始つたわり心地よい。そして重要なのは川村真澄の詞。明瞭なストーリー物もあるが、核心をつくようで煙に巻く言葉遊びがいい。同時期の池田聡に近い、繊細ですこし冷酷で世を拗ねた表情。


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