武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

Otussy『大きいほう』(平27)

f:id:mukawatsuruo:20190909153707j:plainオツージーさん初のフルアルバム。
作詞作曲は御本人、アレンジおよびミックスはDr.HB氏。

カッコいい!

30年の歴史に幕を閉じた平成ポップスのカッコいいところを濃縮還元して、カッコ悪いとこすらもチャームにしてしまう底深さ。
これ一枚あったら、他の平成アルバムは9割方聴かなくたっていい気さえする。

本領はR&Bであろう。重たくなく手触り優しい音作り。楽器と打ち込みも絶妙に融け合い……私的には『さよならは夕暮れに』『夜が明けるまで』のトリッキーな音とコード進行に泣かされる。打ち込みの比重高い『丘を越えて』も好き(ところでトランペットとドラムはクレジットに無いけど打ち込みなんですか?)。
他にもジャンル多彩に、ボサ、レゲエ、カントリー……昭和パロディなブギ、GSもあり。

ボーカルは、ライヴでも聴かせて戴いたが、そこに居るにも拘わらず現実でないみたいに思える声。たとえるならシリーズ化された映画やテレビドラマのオーラ溢れる主人公を、いきなり目前で見るような感じ。面喰らった。いまCDで聴いてもやはり面喰らう。
他者の名を挙げるのは失礼かもしれないが……桜井和寿の粘り気を伴ったハスキーさ、星野源のこざっぱり感、藤井隆の生真面目な遊び心、池田聡ユニセックスな色気……等々といった要素がオツージー氏一人のなかに入っている気がする(ただ彼は低めのレンジも結構効かせるのだけど、そこは平成アーティストにあまり見られない魅力かもしれない)。自作とは言え方向性のバラつく楽曲群も、キャラクターとアレンジの力量で纏めあげてしまう。

で、歌詞(笑)。帯にあるように、ギリギリアウト?な下半身寄りのネタをソフィスティケイトされた楽曲で歌いあげるのがこの方の醍醐味とされている……筈だが、全11曲中、外で口ずさんだらヤバそうなのは意外にも3曲だけで、ちょっと残念な気がするようなしないような(笑)。ユーモラスとシリアスで分けても丁度半々といったところ。歌詞や曲順を一切見ないで、次に何を歌い出すか、多面性を楽しみながら聴くのも面白い。

にしてもそのあたり、詞曲との向き合い方はどのようなものなのか、チャンスがあれば伺ってみたいところ。

オツージーさんHPより購入サイトへ行けるようです。
http://otussy.com


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