武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

音楽を聴く<6>

●森山加代子『しんぐるこれくしょん』
'70年代の歌唱。新たに開拓したサンバ路線、往年の洋楽、そして酒と煙草の似合うミディアム歌謡(西田佐知子っぽい感じ)……どのジャンルも、年季を入れた重みと軽快さを伴い響く。
私的には単調ゆえに説得力の要りそうな『悲しきインディアン』が印象深い。

●園まり『園まりデラックス』
裏声というだけで異次元めいたものを覚えるが、それで艶めく情緒を自在に表されればもはや恍惚の極み……
ときに昔の動画を観たが、か弱げな趣でいてビッグバンドを完全に牽引する姿に驚いた。ムード歌謡の「一見被虐的だが実は屈強で凛々しい」様をある種最も象徴する存在。

池田聡"SWIMMER"(平元)
これだ。悲哀や裏切りさえ夏の清涼剤、これぞ池田聡
タイトルチューンが最も象徴的か。泳ぐ唄って数ある中で本作のエロな暗喩とクールさは格別(及川眠子作詞)。
反して、温かな言葉をジゴロの殺し文句宜しく口にする曲たちも又趣深い(え?そんな曲無いって?)。

ザバダック"ZABADAK"(昭61・62)
1st2ndを併せた盤。四半世紀ぶりに聴く。
ケルトなようで無国籍な楽曲群……性別も消したユニットと思っていたが。少なくともこの盤はニューウェイヴな重低音ゆえか上野さんの執筆が少ないからか存外、とても少年もしくは男性的。吉良氏の声が輝く。

高井麻巳子"Message"(昭63)
4thでラスト。今井美樹的な現実味と解放感を出そうとした風にも見受けられるが、唄声は意外に引きが強く、OLに扮した姿や「恋わりと多き女設定」さえも、コスプレでなく妄想でなくさりとてリアルでもない、まるで違う星の一幕みたいに感じさせてしまう。


©️2019TSURUOMUKAWA