武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

音楽を聴く<3>

沢たまき『ベッドで煙草を吸わないで』(昭47)
熟成した唄声とドラマの姐御キャラで人気に。
この盤は当時ありがちな流行歌カバー(自身の曲含む)と侮り聴けば。過ぎし日を湖底で永劫語り続けるような音色はオリジナルを消し去り(サントワマミーの咀嚼とか見事)。この時代の至宝たる歌い手だ。

奥井亜紀“Wind Climbing”(平7)
2nd。伸びやかで機微ある裏声と大村雅朗・鶴来正基らによるビビッドな音色との合体。1stはやや内向的な印象だったが此方は一転し世界一周するような、百花に埋れるような。寓話における光と闇の両極をゆく(詞は別に幻想的でないのに)濃密さ。

久保田早紀『エアメール・スペシャル』(昭56)
デビュー1年半で4枚目(!)の盤。『異邦人』より編曲を手掛け続けた萩田光雄はこれで最後。先行シングルが明朗アイドル路線(CM曲でイメージに沿ってか)で危うげに思えたが、アルバム開けば当人の芯は不変。明朗さが却って他の陰翳を濃くした。

ジェーン・バーキン“Versions Jane”(平8)
囁きのミューズを見出したゲンスブールはこの盤の5年前に逝去。彼による楽曲を総て異なる編曲者で綴る。90年代の音をジェーン×セルジュは泰然と或いは気怠く着こなし、王座或いは安いベッドに横たわる。二人は時を拒まず且つ、不動。

大貫妙子"SIGNIFIE"(昭58)
久々に聴いた。この時期の大貫さんはどのアイドルよりも天然の愛らしさがあり、どのアーティストよりもトンガっていたかもしれない。
音はテクノで軽めと思っていたが、存外に厚い抱擁を感じ(リマスターでもないのに)……『夏に恋する女たち』で泣けるとは。


©️2019TSURUOMUKAWA