武川蔓緒(つる緒)の頁

みじかい小説を書きます。音楽や映画の感想つぶやきます。たまに唄います。成分の80%は昭和です。

ドラマ『非情のライセンス』鑑賞記録<七>

<昭和48~55年、天知茂が特捜部刑事を演じたドラマシリーズ。

好みのエピソードの感想を書いてゆきます。ネタバレを多少含みますので御注意を>

第2シリーズ42話『兇悪の時効』
かつて赤線にいた女二人の数奇な運命が、当時の?モノクロ写真をフラッシュバックさせつつ綴られる。
女はセレブとなった村田知栄子と、真逆に質素に暮らす川口敦子。蓋を開けば地味な方の川口が、昼の顔夜の顔をまるで狐が化かすみたいに演じわける。

第2シリーズ44話『兇悪のヌード』
女性メインと思わせて、フィーチャリング渡辺文雄(エリート警部)。天知と睨み合ってんだか本当はじゃれ合ってんだか、趣深いオス同士の関係性(山村聰とのそれとは少々テイストが違う)がこれ迄で最も尺長く?描かれる。
タイトルのヌードは、序盤で踊るように脱ぐ(?)川崎あかねの他、そこで?という意外な場面で出てくる。

第2シリーズ49話『兇悪の射殺命令』
鳥取・米子でロケ。だが観光ムードは感じさせず。
砂丘、海辺、庭園、海の見える螺旋階段、花畑……事件はいつも通り兇悪でありながら、ワイドな舞台と少人数の役者で、静謐な空気を醸している。事件の回想でさえクール(後半ホテルでの唐突なリンボーダンスステージさえも静けさを引き立てたような)。
ゲスト嵯峨三智子の佇まいは、『必殺』シリーズの山田五十鈴を彷彿とさせる。

第2シリーズ52話『兇悪の再会』
第2の放送1周年を記念し?インストだったオープニング曲に歌詞がつき、天知が熱唱。エンディングの『昭和ブルース』と歌で挟み撃ち、まさに熟年のアイドルドラマ?(むろん大好きです)
『非情』では珍しい、都会の雑踏(狭いフレームでなく広範囲の)に役者が入り込むシーンをシュールに感じた。天知が輩に絡まれたと思ったら、スルリとかわし渡辺文雄と並んで歩き……
ほどなくしてまたゲストのジャネット八田と二人で雑踏、かと思えば瞬時に何故か誰もいない地下道入口に……まるで鈴木清順の映画でも観るようだ。

第2シリーズ57話『兇悪の壁』
冒頭10分は署内で山村聰部長と二人芝居。いつの間にやら部長に見せるようになったテクニカルな百面相がいとおかし。
それからは実質、ゲスト吉行和子との二人芝居。なんだか低予算のポルノ映画みたいでもあり、勅使河原宏の『砂の女』みたいでもある。吉行は岸田今日子に勝るとも劣らぬ神秘性と色香を見せた。
……と言うか会田さん(天知)、料理できるんだ。


©️2021TSURUOMUKAWA

ドラマ『非情のライセンス』鑑賞記録<六>

<昭和48~55年、天知茂が特捜部刑事を演じたドラマシリーズ。

好みのエピソードの感想を書いてゆきます。ネタバレを多少含みますので御注意を>

第2シリーズ17話『兇悪の誇り』
岡田光治によるやはりデコラティヴな脚本で、主演は加茂さくら。元子爵家令嬢で若い男に溺れ堕ちる設定は最高(発声もヅカっぽい響きの良さ)。対する仲谷昇も以前の登場よりデカダンを纏っていてよろしい。
左とん平が登場するか否か確認するのも楽しみになってきた(ここは登板せず。正解)。

第2シリーズ19話『兇悪の十字架』
可憐な竹下景子が父と不倫関係にあった女優・司美智子を怨み……当然主役は竹下なんだけど、後半から毒婦ぶりを詳らかにしてゆく司のコクが深く。替え玉だろうけど若くないヌードも香ばしく。

第2シリーズ23話『兇悪の夜の蝶』
ゲスト篠ヒロコ。バーでの歌披露は前シリーズにもあったが、僅か2年で随分と垢抜けて、美麗。ピアノのシンプルな伴奏で、実際に現場で歌っている?
「♪ケイ子がモデルを辞めたこと貴方は聞いたでしょ」って曲はいずみたくによるオリジナルか?(『ベッドで煙草を吸わないで』も歌っていた)
それにしても、当時の医療体制ってあんなに酷かったのだろうか。

第2シリーズ33話『兇悪の街角』
生真面目な役柄の印象が強い高林由紀子が、夜の歓楽街で男を誘う。立ち姿や言葉がやはり上品で、シュールな画。
そこに刑事の江波杏子が、自身も娼婦に化け大型組織へ潜入する。天知も止めるほど危ない所まで行くのでヒヤヒヤ。
どちらにせよ、夜道にいたら怖い(褒め言葉です)。

第2シリーズ36話『兇悪のふれあい』
ゲスト藤田弓子。おぼこい風情から、擦れっ枯らしな趣(クラブホステス)まで、案外に奥行きと生々しさで以て見せてくれる。中村雅俊『ふれあい』インストがBGMというクサイ演出にも負けない(笑)。いつも細かなアドリブを仕掛けてくる左とん平も、魅了されて(?)大人しく。


©️2021TSURUOMUKAWA

ドラマ『非情のライセンス』鑑賞記録<伍>

<昭和48~55年、天知茂が特捜部刑事を演じたドラマシリーズ。

好みのエピソードの感想を書いてゆきます。ネタバレを多少含みますので御注意を>

第2シリーズ7話『兇悪の黒い天使』
ゲスト影万里江。弘田三枝子かしばたはつみのようなルックスとアーモンドな声が魅力的。劇団四季の人気女優だったそう。そう言えば天知とほぼ部屋で終始する様は演劇的。
対比するようなどこかカラッとした若者達の動きも興味深く(動き出す車に窓から乗ってた。身軽と言うか無謀と言うか)。ラストにもびっくり。

第2シリーズ9話『兇悪の口紅』
ジュディ・オングの静と動の魅力が抽出される。
茶室で天知と、厳かな静寂と所作を纏いつつ、事件核心に迫るシーンは美的。
鹿児島ロケは派手さに欠けるかと思いきや、火山灰吹きすさぶ桜島で逃走など、結構スリリング。
どこに行っても若者にディスコはつきもの? 髪を乱し踊るシーンもあり。

第2シリーズ10話『兇悪の星』
夜間中学に通う男(佐々木剛)が容疑者に。違うドラマみたいな味わい深いクラスには生徒として内海桂子・好江も登場! 男が住むコンクリアパートや、近所?の水門など風景も芳ばしい。
『故障係の60番』というのがあった。「○○○○番は電話カバーをかけてて受話器が外れることがあるんです」等と局員が把握していて面白い。

第2シリーズ14話『兇悪のロマン』
頭から尻尾までクレイジー
関西訛り(標準語であるつもり)のエロ富豪・曽我廼家明蝶、乞食の頭領?・坊屋三郎と灰汁だらけの老優ゲストを皮切りに、レギュラー陣も女性捜査専門刑事?の高城丈二、ドラアグばりに輪郭濃く動く江波杏子(ラストシーンは本当にドラアグ)……と、さながら『プレイガール』の趣。
あと外見ギャルなのに男言葉のゴシップ記者が苛つかせてくれる。50年代の邦画にもよく似たのがいたけれど。

第2シリーズ15話『兇悪の故郷』
捜査一課のエリート渡辺文雄と特捜部の天知との、攻防って言うか本当は仲良し?な様子が描かれる。天知がやんちゃな弟で渡辺が真面目な兄って感じだが、今回は渡辺もらしくない強引さを見せるのが痛快。
ゲストは二度目?の赤座美代子。実力者の夫人でありつつ庶民性が少々はみ出す様子がぴったり。


©️2021TSURUOMUKAWA

ドラマ『非情のライセンス』鑑賞記録<四>

<昭和48~55年、天知茂が特捜部刑事を演じたドラマシリーズ。

好みのエピソードの感想を書いてゆきます。ネタバレを多少含みますので御注意を>

第2シリーズ1話『兇悪のアリバイ』
ゲスト中村玉緒木暮実千代の回と似て、女優にクローズアップし過ぎてエピソードの印象は淡くなった感じ。しかし流石は百戦錬磨、機微を表情で丹念に描く様は圧巻。
前シリーズから半年、山村聰渡辺文雄との掛け合いも変わりなく。左とん平も転生して登場(笑)。

第2シリーズ2話『兇悪の傷痕』
ゲスト江波杏子市原悦子。両極とも言える二人、前半江波、後半市原と分ける塩梅で魅力をねっとりと、巧みに描いていた。
ラストに結婚式という、ドラマに最も縁遠いシチュエーションに驚愕。新郎が面妖なパーマにグラサンでさらに驚愕(回想シーンの地味な顔と見分けつかない。男も化ける70年代)。

第2シリーズ3話『兇悪の序曲』
ゲスト宮本信子。前半はあまりにも地味で誰かわからず。後半は映画『お葬式』を彷彿させるような、虚ろな眼差しでいて少し角度が変われば艶と狂気を滲ませる文楽人形みたいな有り様が素敵。取調室でのカットバックが美しく。
一方で、すこぶる陽気にサイコパスを演じる財津一郎がまた怖かった。

第2シリーズ4話『兇悪の火』
ゲスト夏純子。
バニーガール姿で「どうして美弥をいぢめるの?」等というぶりっ子も、現代のそれとは全く違った妙味(むろんそのままで終らないし)。
ふつうのアパートに住んでいたが、電話は引かれていないようで管理人室で借りていた。この時代はそんなものか?

第2シリーズ5話『兇悪のカナリヤ』
ゲスト池玲子
スターの座から転がり堕ちゆく様を、カットバックを多用した表情と肢体で、これでもかと魅せる。単なる色物ではない、骨太な存在感。
クスリに溺れる人物は幾度も出てきたが、鉄格子の病院に入る場面は初めて?
ステージシーンでもフェロモン歌謡『変身』を披露。


©️2021TSURUOMUKAWA

ドラマ『非情のライセンス』鑑賞記録<参>

<昭和48~55年、天知茂が特捜部刑事を演じたドラマシリーズ。

好みのエピソードの感想を書いてゆきます。ネタバレを多少含みますので御注意を>

●第1シリーズ41話『兇悪の試験地獄』
受験は大して描かれず。受験生の母(福田公子)をはじめとする、きれいに装いながらも欲望剥き出しの同級生熟女4人へと、いつの間にかフォーカスが切り替りびっくり(ルーツは映画『みな殺しの霊歌』だろうか?)。
むろん全員天知との駆け引きがあって、ホストクラブの男も絡んだりして……男女共に香気が終始ムンムン。

●第1シリーズ42話『兇悪の新曲』
売れっ子作曲家に計3人の女性歌手が絡む。楽曲はちあきなおみ的なテイストで、歌手のメイクや衣裳も時代に沿いサイケで趣深い(君夕子・入江魔子の2人は実際に歌手らしい。各々1曲披露)。
小林幸子が出てるけど何故か歌手役ではなかった。それで良かったと思う(笑)。若手ギタリスト役に田辺靖雄

●第1シリーズ45話『兇悪のスキャンダル』
NHK朝ドラ第一作ヒロインであった北林早苗が、知的でいて蠱惑的な風情で、上司で愛人であった男への復讐を企てる……オープニングが思わせ振りだったわりに、華麗な復讐に値するほどの男でなかったせいか、尻すぼみ。ちょっと勿体無い。

●第1シリーズ47話『兇悪の顔』
ムショ帰りの、それでも威厳を薫らせるヤクザ(内田良平)と、それに関わる姉妹(新藤恵美真山知子)。三人揃って眼が光るような澱むようなインパクトある表情で、潜入捜査する天知と終始血を通わせ渡りあう。脚本も最後まで緊張感が途切れない(と思う時は往々にして、いつもと違う脚本家)。もう一人潜入する関西のおばちゃんもナイス。

●第1シリーズ52話『兇悪』
最終回は、影で政治も動かすほどの大物に挑む。清々しいほど?男ばかりで、画面が黒ずんでる。目立つゲストとしては出門英(ヒデとロザンナの)がいたが、曲が少し流れたかと思えばあっさり撃沈。大ボスの佐々木孝丸が、爺にも婆にも見える顔で、本当に国を操り嗤うかのようで震えた(でも前述の45話にも株主役で出ていたと、調べるまで気づかず)。


©️2021TSURUOMUKAWA

ドラマ『非情のライセンス』鑑賞記録<弐>

<昭和48~55年、天知茂が特捜部刑事を演じたドラマシリーズ。

好みのエピソードの感想を書いてゆきます。ネタバレを多少含みますので御注意を>

●第1シリーズ21話『兇悪のメロディー』
ゲスト佐藤友美。まるで岸惠子が演じた雪女みたいな、凍てついた美女ぶりが良い。題は『メロディー』だが歌うわけでなく、ピアニスト役。
たまに登場する捜査一課長・岡田英次、何故覇気のない感じなのか? 太めのタッチで描かれた署内のキャラ達の中で、浮いてて面白い。

●第1シリーズ23話『兇悪のシャンソン
ゲスト美輪明宏君島一郎オートクチュールを身に纏い、男役女役を華麗に演じわける。男役で跳ねる様は手塚治虫のキャラクターみたい。
『黒蜥蜴』コンビの天知と絡みは何故か少なめだが、やはり画になる。
ときに『非情』は出てくるレギュラーが毎度違うけど、今回は二枚目の宮口二郎刑事と、おちゃらけ左とん平を据えており、大正解。

●第1シリーズ24話『兇悪の回路』
前回に負けない、アニメっぽいカラフルさのあるハードボイルド。特に序盤10数分は素晴しい。どんでん返しの女、ジャズの男(まともな演奏シーンが無かったのは残念)……
地井武男はどこ? と思ってたら終盤でようやく気づいた。それもどんでん返し?
差し色として描く村松英子(和装)の場面、ボス山村聰と天知の仲良過ぎる様子も趣深い。

●第1シリーズ37話『兇悪のビーナス』
ゲスト太地喜和子。囁きのような台詞回し、焦点の定まらぬ眼……カメラワークやカット割りも、いつもより?幻想的。太地が退場した途端、現実に戻される気分に。
美輪さんの回の連作みたいに、フランス絡みの美術界の闇が描かれる(同じ絵も映った)。こちらの方が謎解きなど練られていると思ったら、前述の『回路』と同じ脚本家。
屋外のエスカレーターはどこなのか?

●第1シリーズ38話『兇悪の虚栄』
ゲスト木暮実千代! 70年代現代劇に彼女が在るというだけでも幻想的(出ていなくはないようだが)。シュールな壁紙と裸体画をバックに佇む姿が特に良かった。
年相応の柔らかな物腰で始まったと思いきや、人肉を喰らいそうな夜叉の顔も見せ(映画『鮫』を思い出す)……存在感に対しストーリーはやや生温いか。


#昭和 #showa #レトロ #retro

ドラマ『非情のライセンス』鑑賞記録<壱>

天知茂が特捜部刑事を演じたドラマシリーズ。基本ハードボイルドだが、回によってセクシーあり、直球な社会風刺あり、人情やユーモアもあり。ゲストは毎度、当時の名バイプレイヤーから、若手、大御所、流行歌手まで数多く登場。70年代カルチャーも楽しめる。
昭和48年から55年にかけ、3つのシリーズ、全202話が放送された。近年DVDも発売、CSでも再放送と、根強い人気。

好みのエピソードの感想書いていきます。ネタバレを多少含みますので御注意を>

●第1シリーズ1話『兇悪の門』
初手から天知の刑務所潜入。塀の中仲谷昇財津一郎名古屋章と香ばしく。特捜部の面々もまだ清々しいほどに非情。
そして後半登場のヒロインは加賀まりこ。なんと天知と1対1のワンシチュエーションで終始する。初回だというのにシンプルで、ある意味贅沢。

●第1シリーズ2話『兇悪の迷路』
この頃は原作に忠実だったのだろうか? 派手さはないが、台詞のやり取りにひんやりしたスリルが。その糸を操るのは野際陽子。元アナウンサーの力量も光る。70年代ファッションもよく映え。乗っている青のワーゲンもかわいい。

●第1シリーズ3話『兇悪な夜の匂い』
早くも派手に(笑)。正攻法でダメなら腕ずく拳銃ずくで壁を破る。後のシリーズを鑑みても、こっちの方がドラマ『非情』としては本領か。
対する悪役・今井健二南原宏治も、女を喰って生きる魑魅魍魎みたいで華があり。
ところで第1シリーズにおいて女優は刑事もおらず1回きりの人物ばかりだが、唯一準レギュラーとして謎めきつつ芳香をはなつ貴重な存在が、村松英子。この回では珍しく洋装。

●第1シリーズ4話『兇悪のサファイア
そしてまた「ひんやりスリル」の路線に戻る。この回は江波杏子で、後に再登場した際の能動的な?キャラとは別人格を演じきる。喪服が実に似合う。
デパートの風景が趣深い。あれはどこだろう?

●第1シリーズ10話『兇悪の骨』
ゲストは麻薬捜査官の赤座美代子西沢利明の二人。いずれも細面で、造りもどこかしら似ていて、今にも守るべき立場から崩れ堕ちそう……どっちが先に? とハラハラ。
ラストシーンは『第三の男』っぽい並木道で、ベタだけど空気感が良い。都内だと何処で撮るのかな。


©️2021TSURUOMUKAWA